「魔法の呪文はロップ・ドロップ」   月香るな



 乱暴に戸を叩く音で目を覚ます。朝っぱらから庭に入り込んで、俺の部屋の窓を叩くような人間なんて、一人しか思い当たらない。
「ロッテ! 今起きるから、それくらいにしておけ!」
 板戸のすき間から外を覗く。一抱えもありそうな石を両手で持ち上げたロッテが、窓の外でぴたりと動きを止めた。ちょっと待て、それはもしかして板戸に投げつける気だったのか。
 ロッテ=メイジは俺の幼なじみだ。そばかすの散った顔に、二つに括った枯れ木色の髪、はしばみ色の大きな瞳。お世辞にも美人とは言い難い、青春入り口の十三歳。
「そうやって、早く起きてくればいいのよ。今、いったい何時だと思ってるの?」
「時告鳥も鳴かない早朝」
 開けた窓から見える空は、まだ朝焼けの色。ロッテは「それはともかく」と言いながら、窓の掛け金を開けるよう要求してきた。ともかく、じゃない。何の権利があって、俺の安眠を邪魔するんだ。
「今日はお休みでしょう? 手伝ってよ、コリス。今から料理を作るんだけど、コリスの力が必要なのよ」
 言いながら石を放り出し、ロッテは背負い袋を探る。中から出てきたのは、一冊の古びた本。
「地下室で見つけたの。おもしろい料理がたくさん載ってるのよ」
 そんな理由で俺の安眠を邪魔したのか、お前は。
「この中のお菓子を作りたいんだけど、仕上げに魔法が必要なの。あたしは魔法使えないから、コリスに手伝ってもらわないと、ね?」
 「ね?」じゃない。何を作るのか知らないが、魔法使いなら他にもたくさんいるだろう。
「ほら、コリスってば、最近太った、って気にしてるじゃない。だから、いい運動になると思って誘ったんだけど。……だめ?」
「いい運動?」
 うん、とロッテは頷く。
「今からファルマ香草とリビンテを買いに行って、それから森に入ってトッケの実を拾うでしょ。それからミービリの水を汲んできて、ガシュウを一袋用意して……」
「……ロッテ。それは誰がやるんだ?」
「コリス」
 言ったその手に、一冊の帳面。
 ロッテはにこりと微笑んだ。
 俺はこくりと頷いた。


「どうしてそこで引き受けちゃうかなあ」
「だって仕方ないんですよ、アイツ小さい頃からの俺の恥ずかしい話、全部帳面につけて肌身離さず持ってて! 逆らったらあのやたら通る声で朗読されるし、そしたら俺、もう」
「どんな話だよ」
 隣のエスカさんと出会ったのは、俺が玄関を出た時のこと。
「木に登ったきり降りれなくなったとか、そんな感じかい?」
「だったらいいんですけどね」
 そういえば自己紹介が遅れた。俺の名前はコリス=チーリン、次の秋で十四歳。魔法使いだった父親の影響で(今は引退して、街で『魔法省開発局リサイクル推進課長』とかいうのをやっているらしい。それなりに偉いのだと聞いた)、少しばかり魔法の心得がある。
「それじゃあ、俺は行って来ます」
「がんばってね」
 柔らかく微笑むエスカさんに手を振って、俺はロッテが待つ庭へと向かった。


 ロッテの後について彼女の家に向かう。台所には既に菓子作りの用意がされていて、朝飯はどうするのだろう、と俺はぼんやりと考えた。狭い台所に広げた椀や皿、それからカップ。大袋ごと置かれたマジェリー粉が、この場所での朝飯作りを困難にしていた。
「それじゃあ、これからお菓子作りを開始します!」
 威勢よく声を上げるロッテ。とはいえ、その前にたくさんの準備が要るわけで。俺は勝手に氷箱を見つけると、掛け金を外して重い蓋を持ち上げた。中には細長い茶の容器と、常温ではすぐ痛んでしまう果物や野菜がいくつか。
「まず、トッケの実とリビンテ、ヨウラを用意して混ぜてつぶすの」
「ヨウラはそこにあったな。あとはトッケとリビンテか」
 菓子の香りづけに使う香草が、椀のわきに置いてある。ファルマも使うと言っていたか。確かにヨウラとファルマは相性がいい。
「その後、ミービリの水とマジェリー粉、ガシュウをお椀に入れて混ぜて、さっきのと一緒にするの。最後に、お酒とファルマを適量」
 うん、まあ、いいんじゃないだろか。
「あとはそこに、『ゆうしゃのなみだ』と『おとめのいのり』を加えて、型に入れるのね。それに魔法をかけてから氷箱で冷やすの。半刻くらいで固まるから、そうしたら出来上がり」
 仕上げに魔法を使うのは、よくあることだ。が……。
「……『ゆうしゃのなみだ』と『おとめの……』なんだって?」
「『おとめのいのり』。大丈夫、街の雑貨屋に行けば二束三文で売ってるわ」
 待て、俺はそんなもの見たことないぞ。どこに売ってたんだそんなもの。むしろそれは何だ。
「見たことあるでしょ? 奥の棚の上から三段目」
 知らねえよ。
「はい、お金とメモ。おつりはちゃんと返してね」
 俺はどこぞの幼児か。
「桶も渡しておくわ。ミービリの水、汲んできてよ」
「……それなんだけどな、ロッテ」
 俺はさっき覗いた氷箱を再び開ける。
「このお茶、ほら、ボトルに『ミービリの清流水百%使用!』って書いてあるだろ? これでいいじゃないか」
 殴られた。……我ながら、いい思いつきだと思ったんだけどな。
「あ、それから。トッケとガシュウ、採りに森へ入るでしょ? はい、お鍋。頭にかぶれば安全よ。フタは盾になるわ」
「……どうも、ご親切に」
「武器、タワシでいい?」
「何でもいいよ……」
 こうして俺は、料理の材料を調達すべく出発した。
 っていうか、料理するなら用意しとけよ、それくらい。


 とりあえず、水汲みは最後に回すとして。俺はメモと財布とタワシ、それから空の袋を桶の中に入れ、鍋をかぶりフタを盾にして、森の中へと足を踏み入れた。
 ガシュウ一袋分くらい、適当にあるいていればすぐに見つかるだろう。暗い森の中なら、どうせどこにでも生えている。あとは、あの鋭い牙に噛みつかれなければ大丈夫。
 ああ、それから、あの鳴き声も要注意だな。
 俺はすぐにガシュウの群生地を見つけ、噛まれないよう距離を取りながら慎重に近づく。腰に差した魔法の杖をそろそろと差し出して、警戒したガシュウが杖に噛みついたところを、一気に引き抜く。
 迷わず袋にたたき込んだ。中でガシュウが鳴いている。
「後生だよ坊や、助けておくれよ。おいらには三人の息子と可愛い娘がいてなあ、娘はそろそろ……」
 ガシュウが鳴いている。別のガシュウの鳴き声が重なる。
「あ、あたいを捕まえようってのかい、そうはいかないよ! だいたいね、あんたみたいなひょろひょろしたガキに、あたいが捕まるもんか! そうさ、あたいがいなかったら、誰が子供たちの世話を」
 耳を貸してはいけない。油断すると噛みつかれる。麻の袋に入れて、まじないをかけた紐で口を結べば、ガシュウはただの植物に戻る。その果肉は独特の食感があって美味いのだ。皮を剥くと白い果肉が出てきて、料理をするときはそれを細切れにして使う。北はグロッサから南はウェイブまで、大陸中で広く食べられている。ちなみに剥いた皮は、美肌効果があるというので、若い女の子に珍重されているらしい。
「よ、よくもウチの夫を!」
 若いガシュウが牙を剥いている。そんな時こそタワシの出番。柄つきタワシで殴りつけると、そのまますっかり大人しくなった。
「ええと、次はトッケの実……」
 重くなってきた桶を手に、俺はあてもなく森の中を歩いていった。木々のすき間から見えるヤビー山が、方向を示す目印になっている。
「あ、あった」
 葉の色が、独特の黄色っぽい色をしているから、トッケの木は遠目でも見つけやすい。俺はその木の下に向かって走り出した。
「よし、あとはこれを……」
「お待ち!」
 トッケをもごうと手を伸ばした俺の背後から、しわがれた声が投げつけられる。振り向けば、そこに立っていたのは……地主。
「誰の許可があって、アタシの森で木の実を取るんだい!」
 まずい相手に見つかってしまった。地主のばあさまはたいそう偏屈で、しかもけん玉の達人だ。おまけに円周率を五百ケタ暗記しているという噂まである。戦ったら、勝ち目はない。
 俺は魔法の杖を構えた。逃げる準備だ。
「とりあえず謝っておきますっすみません!」
 叫ぶ俺に、ばあさまはけん玉を差し出した。しわくしゃの顔を歪めてにたりと笑う。とても楽しそうだ。どうでもいいが、その露出度の高い桃色の服はいただけない。
「どうだい、コリス。けん玉でアタシに勝ったら、そのトッケの実をくれてやろうじゃないか、んん?」
 くそ、どうして俺の名前を覚えてるんだ。
 いや、むしろけん玉って。何の意味があるんだ、そこに。
「行くぞーッ!」
 ばあさまの声。気を取り直し、俺はけん玉を構えた。これで勝てればめっけもの。深呼吸をして、体内をめぐる力の流れを整える。
 ばあさまがカッと目を見開いた。空気がピリッと緊張する。
「もしもしかめよ、かめさ……うッ!」
 突然ばあさまが倒れた。腰を押さえている。……ぎっくり腰?
「や、やりおったな、コリス……!」
 いや、俺はべつに何も。
「その勇気に免じて……そこのトッケは、好きに持っていくがいい」
「はあ、ありがとうございます」
 ……いや、だから別に俺は何も。


 俺は八百屋に寄ってリビンテを一皿買うと、ファルマを買いに雑貨屋へと向かった。
「あれ、また会ったね」
 入り口の扉をくぐると、ちょうどエスカさんが聖剣を物色しているところだった。俺達の住むこの街は聖剣の名産地で、だから雑貨屋に行けば聖剣なんてかんたんに手に入る。
 エスカさんは長身の男の人で、伸ばした髪を背中の方へ無造作に流している。俺がまだ小さかった頃に、隣に引っ越してきたその時から、彼の髪形はいつも変わっていないような気がする。
 細身だけれど、よく陽に焼けた肌の下にはしなやかな筋肉がついているのがわかる。顔も悪くないし、性格だっていい。確かロッテは、街に住む女の子のご多分に漏れず、彼に惚れていたはずだ。
「聖剣、買うんですか?」
「うん、最近魔王がうるさいから。もう夏だから、多いんだよね」
 そうですか、と答えて、俺はファルマ香草が入った瓶から、三本を取り出す。メモに書かれている通りだ。ええとそれから、『ゆうしゃのなみだ』が百デシベル……ん、デシベル?
「すいません、『ゆうしゃのなみだ』と『おとめのいのり』下さい」
 おずおずと訊いてみる。雑貨屋のおっちゃんは「あいよ」と言って、奥の棚の上から三番目に置いてあった箱を出してきた。
「で、どれくらい欲しいんだい?」
 はあ、と返事をしながら、手元のメモを睨み付ける。
「百デシベルくらい……」
 これでいいのか。単位は本当にこれでいいのか。だが心配する俺をよそに、おっちゃんは何事もなかったかのように箱から瓶を取り出し、その中身を小瓶に注いだ。透明な液体がしたたる。
「あいよ、『ゆうしゃのなみだ』百デシベルな」
 よく見れば、小瓶の中の液体は光をうつして空色に輝いている。こんなものが雑貨屋に売っていたという事実に呆れている俺に、おっちゃんが声をかけてくる。
「で、『おとめのいのり』は何ワットくらい?」
 ……ワット?
 いや、しかし手元のメモにはきちんと「五十ワット」と書かれている。その旨告げると、おっちゃんは箱から今度は粉を取り出して、薬包紙に包んで渡してくれた。いや、待て。なんなんだワットって。
 当惑している俺の横に、エスカさんが立った。
「あれ、コリス君、めずらしい物を買ってるね」
「ロッテに頼まれたんです」
 答えると、エスカさんは納得顔で頷いた。ちょっと待て、これはそんなに有名な物質なのか。
「ロッテちゃんも、一人前に恋する乙女だな」
「え? エスカさん、これ何なんですか?」
「よく、惚れ薬の原料に使うよね」
 そう言ってエスカさんはくすくすと笑った。
 惚れ薬……。
 菓子を作るんじゃ、なかったのか?


 それから俺は一旦ロッテの家に戻り荷物を置いてから、水を汲んで帰ってきた。
「これで全部揃っただろう? さあ、後は勝手にやれよ」
 うん、とロッテは頷いて、さっき言った通りの手順で菓子――いや、惚れ薬なのか?――を作り始めた。
 トッケの実は皮を剥いで中の果肉だけを使う。黄色い果肉は水分をたっぷり含んでいて、つぶすと果汁が皿の上に広がった。それを椀の中に果汁ごと流し込む。甘酸っぱい果汁はジュースにすると美味しい。果肉も控えめな甘みがあって、俺は嫌いじゃない。
 ヨウラは、砂糖漬けにした葉を刻んで混ぜる。リビンテはヘタを取って裏ごし。それを黄色いトッケと混ぜると、椀の中身は色濃いオレンジ色に染まった。たっぷりの水気を含んだトッケのおかげで、水を入れなくても椀の中身は液状になっている。
 それから、ロッテは別の、大きなどんぶりにミービリの清流水を注ぐ。惜しげもなくマジェリー粉を混ぜると、とろみのついた乳白色の液体ができた。さいの目に切ったガシュウを混ぜ、木べらでかき回す。ロッテの話によると、ガシュウとトッケの果汁は合わせると固まってしまうことがあるから、先に水溶きマジェリー粉をからめておくのだそうだ。
 さて、椀とどんぶりの中身を合わせる前に、ファルマを三本どんぶりの中に放り込む。しばらくおいて、甘い香りが移ったころに引き上げ、そのファルマを軽く水ですすいだ。
「本当はぜんぶ混ぜてからやるんだけど、大差ないわよね」
 言われても、料理にうとい俺にはさっぱりわからない。そもそも横で見ていてさえ、ロッテが何をやっているのか、正確にはよくわからないほどだ。
 ロッテは椀の中に入っていた、とろみのついたペーストをどんぶりの中にあける。一旦はどんぶりの底に沈んでいったそれらは、木べらでかき混ぜるとまんべんなく広がった。全体が薄いオレンジに染まる。中に、ガシュウがぽっかりと浮いているのが見えた。
 酒を軽く振りかけ、そこに「おとめのいのり」と「ゆうしゃのなみだ」を無造作に混ぜ込む。ロッテが傾けた小瓶の口から、澄んだ透明の液体がキラキラと糸を引いて落ちた。これで材料は完成だ。ロッテは俺の方を振り返って、「よろしくね」と笑う。その笑みがあまりに嬉しそうで、俺はふと嫌な予感を覚えた。
「それじゃ、あたしが呪文を読むから。コリスは復誦して、このどんぶりに魔法をかけてね」
 頷く。魔法というものは、力ある言葉を意思と共に唱えることで発動するから、ロッテが呪文を流し読みしたところで何の効果もない。俺のように、呪文に意思を乗せる力がなければならないのだ。
 とはいえ、コツを掴めていて呪文さえあれば、呪文の目的なんか知らなくたって魔法は発動する。呪文というのは、そういう風に出来ているものだ。だって、使う人間によって違う効果が出る呪文なんて、危なっかしくて街で教えられないじゃないか。
「行きます。一緒に唱えてね。ロップ・ドロップ・トメル・ドンメル、シャーリの岸にミネヴァが戻る。ローヤン・ベルデ・ドーラン・ゲルダ、血の誓約もて我が前に……」
「ち、ちょっと待った!」
 ふと嫌な予感がして、俺は呪文を断ち切った。無関係な言葉を口にしては魔法の力をうち消し、散らす。
「何だ、最後のは!」
「いや、だから、血の誓約もて我が前に姿を現せ、ドリエ・スキティの老賢者。我が声に答えよ、我が望みを叶えよ、ユーディ・バレンの名の下に」
「いや、ユーディ・バレンってめっちゃ魔王の名前だし!」
「ドリエ・スキティは冥府官の名よね? 立派な悪事、こんな呪文使ってるのが知れたら逮捕モノ」
「てめえ、知っててやらせやがったな!」
 えへ、とロッテが笑った。
「だって、教えたらやってくれないでしょ?」
「当たり前だ!」
 だいたい、血の誓約って。魔法の行使者から寿命をもぎ取る契約だぞ、それは。くそう、他人事だと思って……。
「いいじゃない。コリスってば昔、勇者を呼び出そうとして間違えて魔王を召喚しちゃったときに、ずいぶん寿命削られてたし」
「あれはちゃんと解呪したからいいの! ったく、いつまでもつまんねえこと覚えていやがって」
 ロッテはそれはそれは楽しそうに笑う。大きな瞳がくるくると動いて、俺を捉えた。
「だって、これしか載ってないのよ? 惚れ薬の作り方」
「……やっぱり惚れ薬だったんだ……」
 うん、と頷くロッテ。くそ、人の気も知らないで。
「相手は? エスカさん?」
 小さく肯定される。今日ばっかりはエスカさんが憎い。
「あのな、ロッテ」
 俺は手近な丸椅子に腰掛けた。どんぶりが窓から差し込む午後の光を受けて輝く。そういえば昼飯がまだだった。いや、むしろ朝飯も食ってない。自覚した途端に腹が鳴ったが、とりあえず今は真面目な気分なので気にせず喋りつづける。
「惚れ薬なんかでエスカさんの気持ちを自分の物にして、それでお前は満足か? 他の女の子達だって納得いかないだろうし、なによりエスカさんに失礼だ」
「……わかってる……でも、他にどうしたら」
「あの菓子をマトモに完成させて、エスカさんのところに持っていくとか……とにかく、何かあるだろ、他に!」
 だいたい、と俺はつぶやく。
「エスカさんが本気でお前に惚れちまったら、俺なんかライバルにもなれないじゃないか……」
 視線の先で、ロッテがぽかんと口を開けた。
 それから、当惑顔で目をそらす。
「……あの、コリス」
 どんぶりを小脇に抱え、氷箱の蓋を持ち上げたまま、ロッテが小声でつぶやいた。
「きっと、いいライバルくらいにだったら、なれるよ」
 俺はロッテの方を見て、ぎこちなく笑った。
 何を言っていいのかわからなかった。
 だけどきっと、大丈夫。
 あと五年経って、ロッテが年頃の娘になったとしても。
 ロッテの利発さに、エスカさんが気づいたとしても。
 俺は堂々と対決して、いい勝負くらいはしてやるから。


 それはそうと、ロッテが作った菓子は意外に美味しかった。
 隠し味の「おとめのいのり」が効いているのだとロッテは言ったが、俺もその通りだと思う。
 ロッテが呼んできたエスカさんと、三人で菓子をほおばる間、なぜだか俺は、こみ上げてくる笑いをおさえることができなかった。


戻る

Copyright (C) 2004 Runa Gekka All rights reserved.