序章 うわさばなし ひとつ。夜になると、誰もいないはずの音楽室から、ピアノの音が聞こえてくる。  ピアノはとても下手くそだけれど、絶対に笑ってはいけない。 ふたつ。校庭にあるガーゴイル像は、夜になるとダンスを踊り出す。  じっと見ていると、そのまま踊りの仲間に入れられてしまう。 みっつ。夜、西棟三階の廊下を、首のない魔術師がさまよっている。  首は魔術師の周りを、ボールのように跳ね回っている。 よっつ。ある女子トイレの三番目の個室には、女生徒の幽霊が住んでいる。  昔、校内でいじめられて自殺した女生徒の幽霊らしい。 いつつ。朝の四時四十四分、東棟二階の大鏡をのぞくと、自分の死に様が見える。  そしてそれは、すぐに現実になるらしい。 むっつ。立ち入り禁止のはずの旧校舎から、夜になると騒ぎ声が聞こえる。  決して様子を見に入ってはいけない。二度と出られなくなってしまうから。 そして、ななつ――